先日、厚生労働省が、不適切な報酬の受け取りを禁じる『外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)』に違反したとして、千葉県とさいたま県にある2つの監理団体に対し、令和元年10月8日付で監理団体の許可の取り消しを通知した旨を上記文書にて発表しました。
具体的な違反の内容は以下の通りです。
千葉県の監理団体
ベトナムの送り出し機関との間で「技能実習生が失踪した場合、送り出し機関は監理団体に対し賠償金を支払う」との覚書(裏契約)を交わしていた。
※失踪が1年目の場合30万円、2年目以降は20万円支払うという内容であった。
さいたま県の監理団体
ベトナムの送り出し機関に対し支払うこととしている事前講習の委託料を、いったん支払う形をとった後キャッシュバックさせるという取り決めをしていた。
※正規の契約では、送り出し機関に対し、実習生1人につき1万5千円を支払うこととなっていた。
こうした違反は、一見、監理団体と送り出し機関の問題であって技能実習生には直接関係のないことのように思われますが、技能実習生が送り出し機関に対し支払う費用の上乗せによって、この不正に流れるお金が生み出されているのです。
このような不正の他にも、求人票を送り出し機関へ持ち込む監理団体が、過剰なまでの接待を受けたり、求人票を送り出し機関が高額で買うというやり方が横行しており、ここに使われる費用もまた、実習生の負担になっているのです。
ベトナムの実習生が送り出し機関に支払う費用の上限は3年で40万円(3600ドル)までと国が定めていますが、実際には平均90万円と高額となっており、技能実習で得た収入の多くがその借金の返済に充てられるというケースが少なくありません。
日本で活躍したい、技術や知識を得て母国に持ち帰りたいという思いで日本に来る実習生に、このような不当な負担を強いるのは、決して許されない行為です。
今回の厚労省の発表を受けて、朝日新聞をはじめ日経新聞やNHKニュースなど各報道機関によって詳細な記事が書かれ、厚労省の公式サイトにおいて上記の通知文書が公表されており、団体名や所在地、理事長名等も明らかとなっています。その影響は監理団体の存続だけではなく、組合員が行う事業そのものにも影響を及ぼす可能性もあります。
監理団体の許可を取り消されてしまっては、設立や事業の維持にかけてきた費用や時間も水の泡となってしまいます。
不正を行うことは、技能実習生や送り出し機関だけではなく、ゆくゆくは監理団体、組合員自身に大きな不利益が及ぶのです。
今回の問題を受けて厚労省は、こうした事例が他でも横行している可能性があるとして、調査していく方針を示しています。技能実習制度は日本に来てくれる実習生あって成り立つもので、その実習生の人権を無視した行いや、不正なお金の流れがあっては、この制度自体の存続も危ぶまれます。
技能実習制度に関わる、監理団体・送り出し機関・実習実施者・技能実習生にそれぞれ利益が分配されることで、この制度がうまく機能するのだということをご理解いただき、今回の記事にあるような不正のないよう襟を正して、優良な監理団体を目指していただきたいと願っております。
監理団体設立・外部監査を担う当センターでは、技能実習法等の法規関係に精通する行政書士として、監理団体様の事業の継続のため必要なアドバイスをさせていただいております。今回のように、設立した監理団体が許可を取り消されるような事態のないよう、責任を持ってサポートさせて頂きます。